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医療機器プログラム(SaMD)開発の流れ|薬機法・規制対応・市場投入までの実務

診断支援・治療補助・健康モニタリングなど、医療領域での AI ソフトウェアは「医療機器プログラム(SaMD)」として薬機法の規制対象になります。開発の流れ、規制対応の要点、AI 医療機器特有の論点を、実務目線で整理しました。

医療機器プログラム(SaMD)開発の流れ|薬機法・規制対応・市場投入までの実務

医療画像から病気を見つけるアプリ」「ウェアラブルから不整脈を検出する仕組み」——医療領域での AI ソフトウェアは、開発者が思っている以上に規制の対象になります。日本では、これらは「医療機器プログラム(SaMD:Software as a Medical Device)」として、薬機法に基づく承認・認証を得る必要があります。

本記事では、SaMD 開発の流れ、規制対応の要点、AI 医療機器特有の論点を整理します。

※ 本記事は一般解説です。個別案件の規制判断は、PMDA や規制対応コンサル等の専門家にご相談ください。

SaMD とは——「医療機器に該当するソフトウェア」

SaMD(Software as a Medical Device)とは、それ自体が医療機器として使われるソフトウェアのことです。ハードウェアに組み込まれたソフトではなく、独立したソフトウェアとして医療目的に使われるものを指します。

SaMD に該当する例:

  • 医療画像から疾患を検出する AI 診断支援ソフト
  • 心電図から不整脈を判別するアプリ
  • 糖尿病患者の血糖管理を支援するアプリ
  • 認知機能を評価するソフトウェア

SaMD に該当しない(汎用品)例:

  • 一般的な健康アドバイスを返すチャットボット
  • フィットネスログ・歩数記録アプリ
  • 体重・睡眠時間を記録する家庭用ヘルスツール

医療目的(診断・治療・予防)に使われるか」が、SaMD 該当性を分ける軸です。微妙な判定が必要なケースは多く、PMDA への事前相談を活用する企業が増えています。

SaMD のクラス分類

医療機器は、リスクに応じて 4 つのクラスに分類されます。SaMD も同様です。

クラスリスク規制経路
クラス I一般医療機器健康管理向けの一部ソフト届出
クラス II管理医療機器画像診断支援、生体情報モニタ第三者認証
クラス III高度管理医療機器治療判断に直結する AI承認
クラス IV同上(重度)生命に関わる治療補助承認(最も厳しい)

クラスが上がるほど、求められる検証データ量・審査期間・コストが増えます。クラス分類は開発初期で決まるため、最初の判定が事業計画を大きく左右します。

開発の流れ

SaMD 開発の全体像は、おおむね以下のステップになります。

1. 構想・該当性検討 そもそも SaMD に該当するか、該当する場合のクラス分類を検討。PMDA への事前相談(対面助言)を活用するケースが多い。

2. 開発計画の策定 品質マネジメントシステム(QMS:ISO 13485 ベース)、ソフトウェアライフサイクルプロセス(IEC 62304)に沿った開発計画を立てる。

3. 設計・実装 要求事項・リスク分析・設計仕様の文書化を、開発と並行して進める。後付けのドキュメント化は通用しません。

4. 検証データの取得 臨床的妥当性を示すデータの収集。多施設・多モダリティ・多人種にわたる検証データが求められるケースが増えています。

5. 性能評価 精度・再現率・適合率などの評価指標を、規制目線で報告できる形にまとめる。

6. 承認・認証申請 クラス II は第三者認証機関(QMS 適合と性能評価の確認)、クラス III/IV は PMDA への承認申請。

7. 上市・販売開始 保険適用、医療機関への営業、運用サポート体制の構築。

8. 市販後の継続管理 医療機器の場合、上市後の不具合報告・継続改善・更新申請も法的義務。

開発期間は、クラス・規模により大きく異なりますが、初版承認まで 2〜5 年は珍しくありません。

AI 医療機器特有の論点

SaMD の中でも、AI を含むものは独特の論点があります。

1. 「学習し続けるアルゴリズム」の扱い 従来の医療機器は「固定された機能」を承認することが前提でしたが、AI は本来、データを追加しながら更新するもの。**「変更管理計画(Predetermined Change Control Plan)」**という考え方が、各国の規制当局で整備されつつあります。

2. データセットのバイアス 学習データに偏りがあると、特定の人種・年齢・性別で精度が下がる可能性があります。「臨床的に多様性のあるデータでの検証」が必須に。

3. 説明可能性(XAI) 医師が AI の判定を信頼するために、判定理由の説明が求められるケースがあります。Black box では承認が通りにくい流れに。

4. 人間との役割分担 AI が最終判断するのか、医師の判断を支援するのか、組み合わせで使われるのか——**「インテンディッド・ユース(意図された用途)」**の設計が重要。

5. 海外規制との整合 FDA(米国)、CE マーク(EU)など、海外規制との整合が事業化に効きます。各国の規制動向を継続的にウォッチする体制が必要です。

SaMD 開発で気をつけたいこと

実務で直面しがちな注意点を 5 点。

1. 早期の規制相談を 規制対応は後付けが効きません。構想段階で PMDA 相談を入れることで、後の手戻りを大きく減らせます。

2. 品質マネジメントシステム(QMS)の準備 ISO 13485、IEC 62304 への準拠は、設計プロセス全体に影響します。ベンチャー企業でも避けて通れません。

3. 臨床医・医療機関との連携 データ収集、性能検証、市場投入後の運用、いずれも医療現場との連携が必要。早期に協力医療機関を確保することが重要です。

4. 保険適用の見通し 医療機器として承認されても、保険適用がないと医療現場での採用が進みません。診療報酬での扱いを開発初期から見通しに入れる必要があります。

5. 上市後の運用体制 承認はゴールではなく、運用のスタートです。不具合報告、データ品質管理、ユーザー教育、改訂申請など、継続的な体制が必要。

まとめ——「医療領域は特別」と認識して進める

医療領域での AI 活用は、一般業務での AI 活用とは別次元の規制環境にあります。事業計画段階から規制対応を組み込む必要があります。一方で、適切に進めれば、競合に対する規制対応自体が参入障壁となり、長期的な競争優位を作れる領域でもあります。

リサーチコーディネートでも、医療機関・大学医学部・医療機器企業との共同プロジェクトを通じて、医療領域での AI 実装・研究支援・規制対応支援に関わってきました。「医療領域での AI 事業を検討している」「SaMD 該当性が分からない」というご相談からお気軽にお問い合わせください。